■建築研究報告 |
費用便益分析から導く建物緑化の特性 加藤真司 建築研究報告 No.148号(2014(平成26年)3月)
|
<概要> |
本研究は、平成19年度から21年度にかけて実施した基盤研究「建物緑化のライフサイクルコストと経済価値評価に関する研究」の内容を中心に、科研費研究「緑のカーテンによる生活環境改善手法に関する研究(平成23〜25年度)」の成果を加えた上で、これらの成果から導かれる建物緑化の特性を明らかにしている。 例えば、一般に建物緑化は都市のヒートアイランド現象緩和効果や建物の省エネルギー効果などといった物理的温熱環境改善効果が期待されているが、便益値として他の機能と比較してみると、必ずしもそのベネフィットは大きくはなく、むしろ都市のアメニティ向上や生物多様性等といった受益者の主観的価値観に根差した機能による便益の方が大きいこと、また、こうした便益は、受益者の知識や環境意識の裏付けがあって初めて顕在化するものであるため、適正な情報の提供が評価値に大きく影響することなどである。これらの特性からは、従来、建物緑化を始めとする都市緑化は面積という量の拡充が主に求められてきたが、むしろ質の向上も併せて図られる必要があり、また、建物緑化本体のみならず、情報の提供や適正な維持管理といったソフト面での体制の充実の重要性が導かれる。 |
|