建設省建築研究所住宅構造実験研究委員会
建築研究報告  No.31,  1960  建設省建築研究所

＜概要＞

  第1は軽量鉄骨構造に関するもので、1昨年度はこの構造の接合部の剛性について研究を行ったが、昨年度はこれに引続いて仕上材および筋違の構造耐力上の効果を模型試験体ならびに実在家屋について実験的に追究した。その結果はとくに仕上材の効果が大きく、この種の構造物の設計にあたってはこれを考慮すべきことを示唆しており、注目すべき提案で、今後の設計に検討の上利用されるものと考える。

  第2は下層に店舗をもつ高層アパート構造において、その下層部における壁配置がその耐震性に如何なる関係をもつかを模型立体架構によって究明したものであり、その結果は1昨年度の耐震壁の分布に関する研究と相まって、この種の構造物の設計に役立つであろう。

  第3は既製コンクリート階段に関するもので、その目的は建築生産の工業化の線に沿い鉄筋コンクリートアパートの建設に効果的に使用しうるかどうかを検討するにあるが、今回の研究によって設計施工上、強度上ならびに経済上の問題点が解明されたので、さらに検討の上今後のアパート建設に有効に利用されることが期待される。

  以上の研究は、住宅局の要望に添って応用技術を重視して総合的に研究を推進するため、所内では各研究部から関係研究員が参加して住宅構造実験研究委員会を設け、これらの研究の調整と促進については特に久田第3研究部長を煩わせて所期の成果を挙げることができた。
  しかし、これらの研究の一部には将来さらにこれを継続する必要があるものもあり、本報告に対して関係各方面のご意見ご助言をお願いしたい。最後に研究費を提供された本省住宅局に対して厚く謝意を表す。

昭和34年9月